香港詠春拳・葉問の四大弟子と宗家代表ら集結-新書出版記念の座談会

 「武術伝承:香港葉問詠春口述史」の新書出版記念の座談会が8月7日香港樹仁大学で開催され、香港詠春拳の始祖・葉問宗師の四大弟子と宗家代表らが集いました。新型コロナウイルスの防疫対策として人数制限での開催となりました。

 著者で香港樹仁大学メディア学科主任の李家文副教授のほか、四大流派から梁相系の梁錦棠師傅,駱耀・長男の駱勁江師傅、黄淳樑系の厳志偉師傅、徐尚田の長男、徐貫通師傅、宗家からは長男、葉準系の李煜昌師傅と次男、葉正系の彭耀鈞師傅が参加しました。 

著者の李家文博士が新書の内容を紹介

 まずは李家文博士が新書の概要を紹介しました。これまで公にされていなかった貴重な写真のほか、1960年から70年代頃に香港で流行った他流派同士の挑戦試合を伝える当時の新聞記事などを掲載しています。こうした他流試合は高層ビルの屋上で行われることが多く、スマートフォンやモバイルゲームなどの娯楽がなかった当時若者の間で人気があったといいます。

実戦名人として名を馳せた黄淳樑が他門派の挑戦状に答えたと報じる当時の新聞「大華報」

 李家文博士が座談会のファシリテーターを務めました。新型コロナウイルス下で経営が困難な中どのように武術館を運営しているか、また世界各地の支部の生徒たちのコミュニケーションやモチベーションの維持のための取り組みの紹介がありました。香港詠春体育会の会長である李煜昌師傅は、普段であれば開催しない型大会をネット上で開き、生徒のモチベーション維持に役立ったと事例を紹介しました。

中学生による基本型小念頭の演武

 スポーツ業界ではズームなどのビデオテクノロジーを使った指導が取り入れられており、ヨガレッスンではポーズの確認などクラスでの指導よりも上手くいっているとの報告もあります。ただ、武術指導においては対人の練習が中心であることから、その有効性には限りがあるとの指摘もあります。

 武術は定期的な練習が必須で一旦クラスでの稽古が一定期間中断されると、生徒の興味が低下し復帰率が低いとも言われています。今後、新たな疫病まん延が起らないという保障がない上、世界で最も高い不動産市場の香港では、アフターコロナの武術館運営は一筋縄には行きそうにありません。

 李家文博士が構想した葉問詠春拳保存プロジェクトは、香港政府系の「イノベーションテクノロジー基金」(118万香港ドル、以下ドル)と「田家炳基金会」(40万ドル)の計158万ドル(約2200万円)の補助金を受けています。人工知能(AI)を活用した絵本制作のほか、葉問門下の師傅によるワークショップなどを開催する予定で、小中学生や保護者らに伝統文化の一部を担う葉問詠春拳について学ぶ機会を提供するとのことです。(了)

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