五枚師太から武術の手ほどきを受け始めて間もない頃、詠春は林の中で一匹の白鶴と毒蛇が対峙している所に出くわした。
詠春は陰に身を隠し鶴と蛇の戦う様子をじっと観察した。
鶴は翼で蛇の攻撃を華麗にかわしながら嘴で応戦。蛇は素早い前後左右の動きで鶴に攻撃を仕掛ける。

詠春はこの様子をじっと観察しながら武術に活かせるに違いないと確信した。
ただ、修行をはじめて間もなかった詠春は、自分が思い付いた蛇と鶴の動きを五枚師太に見せて意見を聞くことにした。
五枚師太は詠春のアイデアを拒むことはせずにむしろ斬新な試みとして評価し、受け入れた。
五枚師太と詠春は、数年の修正と整理の期間を経て武術体系を作り上げていくことになる。
蛇と鶴の動きにヒントを得た詠春のアイデアが五枚師太の武術に吸収される形で融合され、詠春拳の下地となる当時まだ名もなかった武術体系が構築されていったのだ。
現代詠春拳の骨格である三種の型(套路)の「小念頭」「尋橋」「標指」の原型となるものを作り上げた。また同時に、武器術のいわゆる「八斬刀(別称、双飛蝶蝶奪命刀/二字拑陽奪命刀)」も編み出される。
伝承によれば、五枚師太は詠春に福建永春拳(詠春拳とは別)」 、方七娘の白鶴拳系技術と宗鶴拳、その他福建少林寺に伝わる拳術も伝授したとされる。これに蛇と鶴の特徴が融合され詠春拳(当時はまだそう呼ばていない)が誕生したのだ。
つづく
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