【歴史編】女拳・詠春拳(3)詠春、梁博儔と契り交わす

塩業を営んでいた梁博儔(りょうはくじょ)という男がいた。博儔には武術の嗜みがあった。

ある日連れと酒を飲み終え家に帰る途中、豆腐屋から明かりが漏れていた。博儔が戸の隙間から中をのぞくと、生娘が拳術の練習をしているところだった。

両膝を曲げつま先は前方内側向き、歩幅は極端に狭い特徴的な構えだった。それでも突きには威力があった。博儔はこのような拳法をかつて見たことがなかった。驚くと同時に強烈な関心をもった。 

次の日友人にその豆腐屋の娘について尋ねると、福建省少林寺の弟子・厳二の娘、厳詠春であることがわかった。

優れた拳術の使い手であることを知った博儔は、いてもたってもいられなくなくなった。詠春に手合わせするよう申し出たが、博儔の拳術では華奢な小娘にまったく太刀打ちできなかった。

博儔は父親の厳二に詠春との結婚を申出る。厳二は男の跡継ぎがいなかったため博儔を入婿として迎えることにした。

晴れて夫婦となった後、詠春は夫の博儔に五枚師太から授かった拳術を一から教え始める。武術の素地があるだけに成長著しく、博儔は次第に奥義も修得していった。

詠春は夫よりも先にこの世を去った。残された博儔は、五枚師太と愛妻詠春が編み出した拳術の功績を讃えて「詠春拳」と名付け、こうして詠春拳が正式に誕生した。

博儔は最初の伝承者として詠春拳を普及させていくことになる。

つづく

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